ボクサー命懸けの「水抜き」/過酷な減量と体重超過の闇を追う
近年のボクシング界において、過度な水抜きと減量失敗の負の側面を浮き彫りにした象徴的な出来事が、井上尚弥とルイス・ネリを巡る一連の狂騒と因縁だろう。過去に計量失格によってタイトルを剥奪された経験を持つネリの存在は、リミット体重を守ることの難しさと、それが破られた際の理不尽さを世界に突きつけた。
限界を超えた水抜きを試みた結果、調整に失敗して体重超過(ウェイトオーバー)を引き起こす選手は後を絶たない。規定体重を大幅に超過した選手が、計量後に十分なリカバリーを行ってリングに上がる行為は「合法的なドーピング」とさえ揶揄される。圧倒的なパワー差を生み出す一方で、対戦相手のリスクを不当に高めるこの現象は、競技の公平性を揺るがす深刻な問題となっている。