カルピス100年の歴史と誕生秘話|モンゴル発酵乳から初恋の味へ
カルピスの歴史を語る上で欠かせないのが、創業者である三島海雲(みしま かいうん)の波乱に満ちた半生です。大阪の寺院に生まれた海雲は、仏教の利他精神を胸に20代で中国大陸へと渡り、雑貨貿易の事業を展開していました。
事業の途上、海雲は内モンゴルの奥地を訪れた際に深刻な消化器系の体調不良に陥り、一時は生死の境をさまよいました。そのとき現地の遊牧民から差し出されたのが、家畜の乳を発酵させた伝統的な酸乳(馬乳酒・アイラグ)でした。海雲はその酸乳を毎日飲み続けるうちに胃腸の調子を取り戻し、心身ともに驚くほどの活力を取り戻したと自著や回顧録に書き残しています。
「この素晴らしい発酵乳の健康効果を、ぜひとも日本人の健康増進に役立てたい」——強い使命感を抱いた海雲は日本へ帰国後、試行錯誤の研究に着手しました。当初開発した脱脂乳製品「カルピス酸乳」や練乳状の製品は売れ行きが芳しくなかったものの、研究を重ねる中で乳酸菌による2次発酵技術を確立。こうして1919年、世界で唯一無二の乳酸菌飲料が完成しました。
商品の名称は、牛乳に含まれる「カルシウム」と、サンスクリット語で最上の味を意味する五味(乳・酪・生酥・熟酥・醍醐)のうち「熟酥(じゅくそ)」を表す「サルピス」を掛け合わせて命名されました。最高位である「醍醐(サルピルマンダ)」から取った「カルピル」という案も検討されましたが、語感の歯切れ良さと親しみやすさを重視し、音楽家や学者への相談を経て「カルピス」に決定したという記録が残されています。