欲望と狂気描く鬼才・国友やすゆきが漫画界に刻んだ衝撃作の正体

欲望と狂気描く鬼才・国友やすゆきが漫画界に刻んだ衝撃作の正体にまつわる最新トピックを詳しく紐解きます。

経済の次は、家族という共同体の解体劇だった。双葉社『漫画アクション』で連載された『幸せの時間』は、マイホームを手に入れ絵に描いたような幸福を手にしたはずの四人家族が、欲望と不倫、裏切りによって泥沼へと転落していく様を克明に描いた衝撃作である。

住宅ローンに追われる父親の失墜、貞淑な主婦の秘められた性の解放、思春期の子どもたちが抱える闇。日常の皮膜を一枚剥ぎ取れば、そこには抑えきれない人間の本能が口を開けている。国友は容赦のないタッチで、中流階層が抱く「幸福の幻想」を解体してみせた。

本作が東海テレビ・フジテレビ系で昼の帯ドラマとして実写化された際、その過激な愛憎描写は列島を震撼させた。主婦層のみならずネット上でも賛否両論の嵐を巻き起こし、抗議と絶賛が入り乱れる異例の事態となった。日常のすぐ隣にある狂気を可視化する筆力において、彼の右に出る作家はいなかった。

中川 明日香

中川 明日香

ビジネス戦略アナリスト

エンタメ・カルチャー業界の深掘り取材を得意とし、現場のリアルな声をお伝えします。