一心不乱にお茶漬けを啜る男・松村雅史の伝説Cmと驚きの現在

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日本の食品製造業において、株式会社永谷園が打ち立てた金字塔「お茶づけ海苔」の歴史は長い。しかし、1997年に世に放たれた「ただいま!お茶づけ」篇ほど、ブランドの根幹をストレートに表現した試みは他にないだろう。そこにあったのは、従来のフード広告が金科玉条としていた「清潔感のある食卓」でも「爽快な笑顔」でもなかった。

主役に据えられたのは、派手な知名度を持たない俳優・松村雅史。彼が演じたのは、仕事帰りに腹を空かせて帰宅した、名もなきひとりの男だった。どんぶりにご飯をよそい、緑の小袋を破って湯を注ぐ。立ち込める蒸気の中、たくあんを小気味よく噛み砕き、箸で米粒を残らず口の奥へと流し込んでいく。余計なBGMは一切ない。響くのは、食器が擦れ合う微かなノイズと、豪快な喉鳴りだけだった。

視覚と聴覚のダイレクトな刺激だけで購買意欲を爆発させるこのシズル表現は、当時の視聴者に「今すぐ台所へ走りたい」という強烈な衝動を植え付けた。

小林 直樹

小林 直樹

トレンドリサーチャー

シンプルで洗練された住まいづくりとインテリアコーディネートのアイデアを提案しています。