笑顔の奥に潜む遺伝子の謎と新治療:アンジェルマン症候群最前線
1965年、英国の小児科医ハリー・アンジェルマン(Harry Angelman)が3人の子どもを報告した論文「パペット・チルドレン」から60年余り。疾患のベールは神経遺伝医学(Neurogenetics)の劇的な進化によって剥がされた。現在では、母親由来のUBE3A遺伝子(15番染色体q11-q13領域)の機能喪失が根本的な原因であることが突き止められている。
ヒトの脳のニューロンにおいて、父親由来のUBE3A遺伝子は自然な「刷り込み(ゲノムインプリンティング)」現象によって元々スイッチがオフにされている。そのため、母方から受け継いだ対立遺伝子に欠失や変異が生じると、神経細胞内で不可欠なユビキチン化酵素が完全に枯渇してしまう。国際的な希少疾患データベースであるOrphanet(希少疾患プラットフォーム)や医学論文の集積地PubMed(NLM医学情報プラットフォーム)には、この遺伝子欠損がシナプスの剪定や可塑性に与える影響を示す研究が膨大に記録されている。