中国の性暴力対策で何が起きているか?厳罰化と情報統制の真相
大衆迎合的な芸能人の断罪とは対照的に、権力の中枢に触れた告発は徹底的な抹殺の対象となる。その最も鮮烈な例が、テニス界のトッププレイヤーである彭帥(ポン・シュワイ)が引き起こした波紋だ。元副首相という党最高指導部経験者からの性暴力を告発した彼女のSNS投稿は、わずか20分足らずで削除された。その後起きたのは、彼女自身の公の場からの消失と、不可解な「安全宣言」の映像配信という異様な事態だった。
国際ジャーナリズムがどれほど安否を懸念し、説明責任を求めても、北京の公式見解は「悪意ある政治的プロパガンダ」の一点張りに終始した。この事件が世界に与えた衝撃は計り知れない。どれほど国際的な知名度を持つアスリートであっても、党幹部を告発すれば一瞬で存在を消されるという冷厳な現実を、全世界に見せつけたからだ。
かつて大学キャンパスやメディア界隈で芽生えかけた中国版のMeToo運動も、今や壊滅的な打撃を受けている。連帯を呼びかけたフェミニスト活動家たちは拘束され、支援団体は解散に追い込まれた。「個人の尊厳を守る」という普遍的な主張すら、体制転覆を狙う海外勢力の手先としてラベル貼りされる。告発の声を上げることは、文字通り人生を賭けた危険な賭けとなってしまった。