関西風うなぎの魅力と関東風の違い|地焼きの極意と名店を徹底解説
東西のうなぎ文化の違いを語る際、長年語り継がれてきた通説があります。関東の「背開き」は武士社会において「切腹」を連想させて縁起が悪いため忌避されたとされ、関西の「腹開き」は商人の街・大坂で「腹を割って本音で話す」商談文化から好まれたという説です。
しかし、近年の民俗学や食文化史の研究では、この文化論に加えて調理技術と個体差に起因する極めて実利的な理由が指摘されています。
江戸のうなぎ職人が背開きを採用した背景には、江戸前(東京湾周辺)で獲れるうなぎの身質があります。泥炭層で育った江戸前のうなぎは脂が強く身が柔らかいため、腹から裂くと蒸す工程で身が崩れやすかったのです。一方、上方(関西)で流通していたうなぎは清流や琵琶湖水系など身が締まったものが多く、腹から素早く裂いて一気に焼き上げるスタイルに適していました。
また、関西風が「頭付き」のまま長い金串を打ち、丸ごと焼き上げる点も見逃せません。焼き上がった頭部は「半助(はんすけ)」と呼ばれ、出汁を取ったり豆腐と煮込んだ「半助豆腐」として無駄なく活用されました。「始末の極意(食材を余すところなく使い切る精神)」を重んじる上方商人文化の合理性が、そのまま調理技法として定着した証拠といえます。