深夜特急から天路の旅人へ!沢木耕太郎の現在と色褪せない名作の軌跡
『深夜特急』が沢木耕太郎自身の旅路を描いた青春の書であるならば、『天路の旅人』は他者の途方もない人生を背負い、作家としての全霊を傾けて構築された圧巻のノンフィクションです。
主人公の西川一三は、日本の密偵として内蒙古からチベット、さらにはインドへと足かけ8年、数万キロにおよぶ過酷な行程を歩き抜いた人物です。沢木耕太郎は西川本人に対し、生前25年以上にわたって合計数百時間にも及ぶ膨大なインタビューを重ねました。
国家のためという大義名分を超え、ただ「歩くこと」「旅を続けること」そのものに憑りつかれた西川の魂と、それを聞き取った沢木の旅人としての共鳴。息をのむような緊迫感と叙情的な筆致が見事に融合した本作は、ノンフィクションという枠組みを超え、人間の精神の極限を描いた傑作として高い評価を受けています。