二階堂ふみ『人間失格』狂気の熱演|山崎富栄役に宿した覚悟と真の評価
映画『人間失格 太宰治と3人の女たち』で二階堂ふみが演じた山崎富栄(やまざき とみえ)は、戦後の混乱期に美容師として自立して生きながらも、太宰治という底なしの魅力を持つ男にすべてを捧げた実在の女性です。戦争で新婚わずか十数日の夫を失い、心に深い孤独を抱えていた富栄は、太宰と出会ったことで急速にその運命を狂わせていきます。
蜷川実花監督作品ならではの鮮烈な色彩美のなかで、二階堂ふみが見せたアプローチは徹底したリアリズムでした。公開当時のインタビューや関係者の証言によると、彼女は富栄の手記や当時の資料を綿密に読み込み、単なる「太宰を死に追いやった悪女」としてではなく、「誰よりも一途に男を愛し抜いた純粋な女性」として輪郭を立ち上げていきました。
劇中で見せる、太宰の言葉一つに少女のように歓喜する可憐な表情から、他の女性の影に怯え、次第に「死」による永遠の独占を望むようになる狂気の眼差しへの変貌は圧巻です。自らの生を削りながら役に同化していく二階堂ふみの演技力は、観る者に強い戦慄と切なさを植え付けました。