【解剖】『相棒』杉下右京が淹れる一杯の紅茶が、なぜ20年以上も日本人の心を掴み続けるのか?名場面の舞台裏からブームの深層まで
杉下右京といえば、ティーポットを驚くほどの高所へ掲げ、細く繊細な筋を描きながらカップへと注ぎ込むあの独特のアクションだ。だが、あのスタイルは最初から台本に記載されていたわけではない。現場での試行錯誤と、右京という稀代の変人であり天才でもある男のキャラクターをいかに視覚化するかという挑戦から生まれたのだ。
注ぐ位置をどこまで上げられるか。滴を飛び散らせずに美しく見せられるか。撮影現場では何度もテストが行われたという。NGを出せばテーブルクロスも衣装も全滅する。水谷豊の圧倒的な集中力と指先の感覚が生み出す緊張感——それこそが、視聴者を画面に釘付けにするあの数秒間の正体だ。一見するとシュールでありながら完璧に美しいあの所作は、瞬く間に作品の代名詞となった。