ハイスタ「好きにならずにいられない」カバーの真相と名曲の現在地
「Can't Help Falling in Love(好きにならずにいられない)」は、もともと1961年にエルヴィス・プレスリーが主演映画『ブルー・ハワイ』の挿入歌として発表したロッカバラードです。メロディの源流は18世紀フランスの古典歌曲「愛の歓び(Plaisir d'amour)」にまで遡り、悠久の時を経て数々の世界的アーティストに歌い継がれてきました。 この誰もが知る穏やかなラブソングを、Hi-STANDARDは一切の原曲破壊を伴わずに、驚異的なメロディック・パンクへと昇華させました。当時を知るレコーディング関係者やメンバーの過去のインタビュー手記を振り返ると、彼らがカバー曲を選ぶ際の明確な基準は「原曲のメロディが圧倒的に美しいこと」でした。 横山健が奏でる叙情的なギターイントロから一転、難波章浩のうねるベースラインと恒岡章の緻密かつ爆発的なドラミングが合流した瞬間、楽曲は一気にハイテンポなビートへと突入します。美しい3拍子系のバラードが持つエッセンスを損なうことなく、疾走感あふれる4つ打ちのエイトビート/ツービートへ落とし込む手腕は、当時の世界のパンクシーンを見渡しても群を抜いていました。 リスナーを惹きつけて離さないのは、パンクの持つ「怒り」や「攻撃性」ではなく、「音楽を鳴らす純粋な喜びと切なさ」が音の粒すべてから溢れ出している点です。難波章浩の少年のようなハイトーンボーカルと、横山健による絶妙なコーラスワークが重なり合うサビの開放感は、単なるカバーの枠を超えたHi-STANDARDオリジナルの輝きを放っています。