サージカルステンレスとは?アレルギーや錆びる噂の真相を徹底解説
「サージカル(Surgical)」とは英語で「外科の、手術の」を意味します。つまり、メスやハサミ、人工骨を固定するボルトなど、体内や血液に直接触れる医療用器具に用いられてきたステンレス鋼の通称です。ただし、日本の産業規格(JIS規格)に「サージカルステンレス」という正式な鋼種分類が存在するわけではありません。一般的にジュエリー市場でこの呼称が使われる場合、その主成分は「SUS316L(米国規格 AISI 316L)」を指します。
通常のステンレス鋼(SUS304など)との決定的な違いは、その合金組成にあります。鉄をベースにクロム(約16〜18%)とニッケル(約12〜15%)を含み、さらに耐食性を飛躍的に高めるモリブデン(約2〜3%)を添加。そして末尾の「L」が示す通り、炭素(Carbon)の含有量を0.03%以下という極限レベルまで抑えています(Low Carbon)。
金属が錆びない理由は、空気中の酸素とクロムが結合して表面に形成されるわずか数ナノメートルの超薄膜「不動態皮膜(酸化クロム被膜)」にあります。SUS316Lはこの被膜が極めて強固で、仮に傷がついても空気中の酸素によって瞬時に自己修復する特性を持っています。体液や海水といった過酷な塩化物環境下でもイオン化(腐食)しにくいことから、人体への侵襲を最小限に抑える医療用ステンレスとして選ばれ続けているのです。