鈍色とはどんな色?読み方・カラーコードから平安喪服の歴史まで徹底解説

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現代の日本において喪服といえば「漆黒」が一般的ですが、古代から中世にかけての日本では、黒ではなく「鈍色(濃鈍から薄鈍)」が正式な喪服(凶服)の色でした。

平安時代の法制書『延喜式』や『養老律令』の喪葬令では、故人との血縁関係の深さに応じて喪服の色調が細かく規定されていました。天皇や父母など最も重い服喪の対象には、墨を何度も重ねて染めた「深鈍(ふかにび / 濃鈍)」を着用し、関係が遠くなるにつれて「中鈍(なかのび)」「薄鈍(うすにび)」へと色を薄くしていった記録が残されています。

古典文学の最高峰である『源氏物語』においても、鈍色は極めて劇的な役割を担っています。作中では、最愛の女性や近親者を亡くした登場人物が華やかな装束を脱ぎ捨て、鈍色の衣に身を包む場面が幾度となく描かれます。

特に象徴的なのが「幻」の巻です。最愛の妻・紫の上を失った光源氏は、深い絶望のなかで自ら「濃き鈍色」の喪服を調え、世俗の権力や栄華の一切に対する執着を断ち切る決意を固めます。光源氏が詠む和歌や周囲の描写において、鈍色は単なる布地の色ではなく、「この世の無常を受け入れ、来世の冥福を祈る魂の沈潜」を視覚化する記号として機能していました。

また、鈍色の衣を着ることは、俗世を離れて仏門に入る「出家」を暗示する重要な伏線でもありました。平安貴族にとって鈍色とは、人生の最も過酷な悲哀に直面したときだけ身につける、厳粛かつ恐れ多い色彩だったのです。

清水 千尋

清水 千尋

フード&トラベルライター

マーケティングと消費者心理のトレンドを分析し、現代のヒット商品の背景を読み解きます。