天才物理学者・寺田寅彦の生涯と随筆|漱石絶賛の才能と防災哲学の真髄
寺田寅彦の生涯を語る上で欠かせないのが、文豪・夏目漱石との深い絆です。五高時代に出会って以来、寅彦は漱石を終生「先生」として敬愛し、漱石邸で開かれた文学サロン「木曜会」の中心メンバーとして活発に参加しました。
漱石もまた、寅彦の鋭い感性と科学的知性に強い敬意を払っていました。漱石の代表作『吾輩は猫である』に登場する、首縊りの力学を研究したりガラスの球を磨いたりと飄々とした奇行を見せる理学者・水島寒月のモデルは寺田寅彦その人です。『三四郎』に登場する物理学者・野々宮宗八にも寅彦の面影が色濃く投影されています。
寅彦は漱石に科学の最新知見や自然観察の面白さを伝え、漱石は寅彦に日本語の美しさと表現の深さを叩き込みました。文系と理系の枠組みを軽やかに超えた二人の交流は、近代日本文学史における最も美しい師弟関係の一つと称されています。