多磨霊園に眠る三島由紀夫の墓、盗難騒動の真相と知られざる遺訓
この墓所をめぐる歴史の中で、決して風化させてはならない異様な事件が存在する。1971年12月、自決の一周忌を終えて間もない頃に発生した「遺骨盗難事件」だ。何者かによって墓が掘り起こされ、作家の遺骨が骨壺ごと忽然と姿を消したのである。
警察の威信をかけた捜査と連日のセンセーショナルな報道の末、約半年後に遺骨は同霊園内の雑木林の土中から無事に発見された。犯人は右翼思想に傾倒した男だったが、その動機は「三島の魂をより相応しい聖地に改葬したかった」という歪んだ狂信によるものだった。遺骨の盗難という衝撃的な事態は、三島が遺した強烈なカリスマ性が死後直後からいかに人々を狂わせ、神聖視と冒涜の狭間で揺れ動いていたかを物語る歴史の暗部である。