木と祈りが生む奇跡の残響——2026年、なぜ世界の名手たちは初台の「ピラミッド」へ向かうのか
このホールの心臓部は、伝統的なシューボックス(靴箱)型をベースにしながら、頭上にそびえ立つ巨大な変形ピラミッド天井にある。設計を手がけた建築家・柳澤孝彦と、音響アドバイザーとして構想から携わった武満徹が目指したのは、「音楽を聴くための祈りの場」だった。
一般的なホールで見られる平板な反射板はない。天然木(タモ材)で覆われた傾斜天井が、音を複雑かつ均一に拡散させる。残響時間は満席時でおよそ1.95秒。低音から高音まで濁りなく伸び、繊細な弱音でも最後列の座席まで輪郭を失わずに届く。海外の著名な指揮者やソリストが「ここには神が宿っている」と賛辞を惜しまない理由は、この精緻を極めた音響設計にある。