なぜ登山家は指を失うのか?凍傷壊死の真相と生死を分けた生還劇

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標高8000メートルを超える超高所は、人間が長期間生存できない領域、通称「デスゾーン(死の地帯)」と呼ばれます。エベレストをはじめとする8000メートル峰では、大気圧と酸素分圧が海面レベルの約3分の1にまで低下します。この極度な酸素不足が、凍傷の発生スピードと重症度を爆発的に跳ね上げます。

酸素が欠乏すると、血液中で酸素を運ぶ赤血球が増加して血液の粘度が著しく上昇し、血流はドロドロに滞ります。そこにマイナス30度から40度を下回る酷寒と時速100キロを超えるジェット気流の暴風が加わることで、露出した皮膚はわずか数分で凍結します。過酷なクライミング中、ロープの結び直しやアイゼンの調整、酸素マスクのトラブル対応などで手袋を外す行為は、文字通り「指の命を差し出す」に等しい危険を孕んでいます。

さらに高所疲労による脱水症状や低体温症、意識の混濁(高所脳浮腫)が重なると、指先の感覚が失われていること自体に気づけなくなり、ベースキャンプへ帰還した時には手遅れになっているケースが後を絶ちません。

山下 哲也

山下 哲也

自動車・モビリティライター

デジタルガジェットとスマート家電の検証記事を多数執筆。失敗しないモノ選びを提案します。