街宣車はなぜ取り締まらない?警察が放置に見える裏事情と騒音規制の限界

街宣車はなぜ取り締まらない?警察が放置に見える裏事情と騒音規制の限界とはどんな影響があるのか? 主要なファクトを整理してお届けします。

では、街宣車の騒音を律する法律は一切存在しないのかといえば、決してそうではありません。全国の主要都道府県では、いわゆる拡声機暴騒音規制条例(東京都では「拡声機による暴騒音の規制に関する条例」)が制定されており、公道における拡声機の音量に対して法的な制限ラインが設けられています。

警備関係者や警察OBの証言によると、現場で即座に取り締まりが完了しない理由は、条例が定める厳格なデシベル(dB)測定要件と手続き上の二段階構造にあります。東京都の条例を一例に挙げると、規制基準はおおむね「拡声機から10メートル離れた地点で85デシベル(dB)を超える音量」と数値化されています。この85デシベルという数値は、走行中の電車内やパチンコ店の店内、救急車のサイレン直近に匹敵する極めて高い騒音レベルです。

取り締まりを成立させるためには、警察官が専用の騒音計を用いて正確に測定し、基準値超過の客観的証拠を確保しなければなりません。しかし、街宣車は常に移動しています。走行する大型車両から一定の距離(10メートル)を正確に保ちながら風切り音や周囲の交通騒音を排除して測定を完了させる作業は、物理的に極めて高度な技術を要します。

さらに条例上、測定値が基準を超えていたとしても、即座に逮捕状を執行したり現行犯逮捕できるわけではありません。警察官はまず「拡声機の使用をやめる、または音量を下げる」よう正式な警告・勧告を発し、それに従わない場合に初めて「命令」へと移行します。街宣活動を行う側もこの法律の抜け穴を熟知しており、警察の測定部隊が近づくと音量をわずかに絞る、交差点で停止する瞬間だけ音声を切る、といった巧妙なテクニックを用いて検挙基準の網を巧みにすり抜けています。

木村 陽翔

木村 陽翔

テックライター兼ウェブディレクター

デジタルガジェットとスマート家電の検証記事を多数執筆。失敗しないモノ選びを提案します。