江之浦測候所なぜ人気?予約不可の噂と杉本博司建築の全貌を徹底解剖
広大な柑橘山に広がる測候所には、息を呑むような見どころが点在しています。予備知識の有無で現地での感動が大きく変わるため、主要なスポットの特徴を整理しておきましょう。
最大のシンボルと言えるのが、相模湾に向かって断崖からせり出すように設計された「光学硝子舞台」です。清水寺の舞台を想起させる懸造(かけづくり)の骨組みには、釘を一本も使わない吉野杉の木組みが採用されています。その上に敷き詰められた光学ガラスは、太陽の光を受けると水面のように輝き、遠目には海に浮かぶクリスタルの祭壇のような幻惑的な美しさを現出させます。
さらに見逃せないのが「夏至光遥拝100メートルギャラリー」です。海抜100メートルの高地に佇む細長い建築で、夏至の朝、海から昇る太陽光が長さ100メートルの通路を真っ直ぐに突き抜けるよう精密に角度計算されています。壁面には杉本氏の代表作である『海景』シリーズのオリジナルプリントが自然光のもとで展示されており、人工照明のない静謐な空間で絵画と本物の海を同時に視覚に収める贅沢を味わえます。
一方で、天候不順を理由に見学を躊躇する声もありますが、実は雨の日こそ江之浦測候所の別の美学が開花する時間です。千利休の待庵を写した茶室「雨聴天(うちょうてん)」の屋根にはトタン板が用いられており、雨粒がトタンを叩くリズミカルな音を楽しむ仕掛けが施されています。濡れた石畳や光学硝子がしっとりと光を反射し、相模湾に立ち込める霧が山並みを包む光景は、晴天時には味わえない幽玄な魅力に満ちています。