童謡ロンドン橋落ちたの歌詞に隠された怖い意味と人柱の真相を徹底追究
日本で広く定着している『ロンドン橋落ちた』は、昭和期に高田三九三(たかだ・さくぞう)氏らが訳作したバージョンが基礎となっています。「ロンドン橋 落ちた 落ちた 落ちた〜」とリフレインされるフレーズがあまりにも有名ですが、原典であるマザー・グースの英語詞に目を向けると、物語は単に橋が落ちて終わるわけではありません。崩れ落ちる橋をどうやって頑丈に再建するかという、終わりなき悪戦苦闘がユーモラスかつアイロニカルに綴られています。
伝承によって細かな語句の違いは存在するものの、一般的に記録されている標準的な全番構成(代表的な第1番〜第6番)を、原英語詞と逐語的な日本語訳で対比してみると、歌の本来の構造が鮮明に浮かび上がります。
【第1番:崩落の発端】
London Bridge is falling down,
Falling down, falling down.
London Bridge is falling down,
My fair lady.
(ロンドン橋が落ちていく、落ちていく、落ちていく。ロンドン橋が落ちていく、我が麗しの貴婦人よ。)
【第2番:木と粘土の限界】
Build it up with wood and clay,
Wood and clay, wood and clay.
Wood and clay will wash away,
My fair lady.
(木と粘土で橋を架け直そう。しかし木と粘土は水に流されてしまう、我が麗しの貴婦人よ。)
【第3番:レンガとモルタルの崩壊】
Build it up with bricks and mortar,
Bricks and mortar, bricks and mortar.
Bricks and mortar will not stay,
My fair lady.
(レンガとモルタルで架け直そう。しかしレンガとモルタルは保ちこたえられない、我が麗しの貴婦人よ。)
【第4番:鉄と鋼の脆弱性】
Build it up with iron and steel,
Iron and steel, iron and steel.
Iron and steel will bend and bow,
My fair lady.
(鉄と鋼で架け直そう。しかし鉄と鋼は折れ曲がってしまう、我が麗しの貴婦人よ。)
【第5番:銀と金の略奪リスク】
Build it up with silver and gold,
Silver and gold, silver and gold.
Silver and gold will be stolen away,
My fair lady.
(銀と金で架け直そう。しかし銀と金は盗まれて持ち去られてしまう、我が麗しの貴婦人よ。)
【第6番:番人の配置とパイプ煙草】
Set a man to watch all night,
Watch all night, watch all night.
Suppose the man should fall asleep?
Give him a pipe to smoke all night, my fair lady.
(それなら一晩中見張る番人を置こう。もしその番人が寝入ってしまったら? それならパイプ煙草を一晩中吸わせておこう、我が麗しの貴婦人よ。)
イギリスにおける「ナーサリーライム(Nursery Rhyme)」とは、単なる子守唄にとどまらず、庶民の世相風刺や政治批判、生活の愚痴などが暗号のように織り込まれた口承文芸です。こうして全番を俯瞰すると、どんな素材を使ってもテムズ川の猛威や人間の盗難欲には勝てず、最後に「見張りの男にパイプを持たせて眠気を覚まさせよう」という脱力感のある現実的手段に行き着く点に、英国特有のシニカルなユーモアが込められていることが分かります。