常識を覆す名作解釈!美術史家・山下裕二が暴く日本美術の深層
山下の言論の強靭さは、徹底した現場主義に支えられている。長年教鞭を執る明治学院大学の講義室では、学生たちに作品の「現物」と対峙することの決定的な重要性を説き続ける。デジタル画像がいくら高精細になろうとも、和紙の繊維、墨の滲み、絵の具の盛り上がりが放つ気配だけは、展示室の空気の中でしか受け取れないからだ。
その哲学は、日本美術の総本山たる東京国立博物館をはじめとする各地の美術館との協働でも遺憾なく発揮されている。学芸員たちと丁々発止の議論を交わし、収蔵庫の奥深くに眠る未発掘の逸品を展示空間へと引っ張り出す。研究室と展示現場を縦横無尽に行き来するそのフットワークこそが、常に鮮度の高い問題提起を生み出す源泉となっている。