長引く憂うつは鉄分不足?セロトニン低下と隠れ貧血の真相を暴く
SNSやコミュニティ掲示板を調査すると、「何年も心療内科に通っていたが、鉄分補給を始めたら嘘のように心が軽くなった」「鉄分でうつが劇的に改善した」という熱狂的な報告が散見されます。こうした声は単なるプラセボ効果なのでしょうか、それとも確固たる生化学的根拠に基づいた現象なのでしょうか。
都内の心療内科に通院していた30代女性の手記には、次のような生々しい記録が残されています。
「出産後から理由のない涙が止まらなくなり、抗不安薬を処方されましたが、日中の眠気と焦燥感に苛まれ、母親失格だと自分を責め続けていました。転院先で初めてフェリチンを測ると、数値はわずか『6ng/mL』。医師の指導で医療用ヘム鉄の補充を開始して3ヶ月後、朝の動悸が消え、夕方に子どもと笑顔で向き合えるようになった瞬間、自分の弱さではなく栄養不足だったのだと涙が溢れました」
特に産後うつの現場において、鉄分不足は決定的要因の一つです。分娩時には通常500mlから1,000ml近い出血を伴い、さらに母乳1リットルあたり約0.3〜0.5mgの鉄が体外へ失われます。妊娠中に胎児へ優先的に鉄を奪われた母体は、産後、フェリチンが一桁に急落することが珍しくありません。精神的な耐性が底をつき、感情の制御不能に陥るのは極めて自然な生理反応といえます。
一方、ネット上の体験談を無批判に信じることには警鐘を鳴らす必要があります。「サプリを飲んだ翌日にうつが消えた」といった極端な言説は、鉄の代謝動態(フェリチンが蓄積され組織に浸透するまでに通常2〜3ヶ月を要する)から見て非科学的です。鉄不足の解消によって回復する人々が存在する一方、後述する過剰摂取トラブルに巻き込まれるリスクも隣り合わせです。