人の心を揺さぶる倍音の出し方|歌声が劇的に変わる共鳴発声の極意
倍音を極限まで強調して芸術の域にまで高めた伝統技法が、トゥバ共和国やモンゴルに伝わる倍音唱法(ホーメイ)である。また、チベット仏教にルーツを持つシンギングボウルも、倍音の音響心理的効果を体感する上で最適な題材だ。
倍音唱法(ホーメイ・スィーグット)初心者の練習ステップ
ホーメイは、1人の人間が同時に2つ以上の音(低いドローン音と、口笛のような高いメロディ音)を鳴らす特殊な発声法だ。その基礎は、口腔内の容積を舌で2つの部屋に分割し、特定の高次倍音だけを選択的にブーストさせる技術に基づいている。
初心者はまず、喉の奥を軽く絞るようにして低い「ウー」という持続音(基音)を鳴らす。その音を保ったまま、舌先を上あごの歯茎の裏あたりに近づけ、口の形を「ウ」から「イ」、そして「オ」へと極めてゆっくり変化させる。口腔内の共鳴ポイントが変化するにつれ、基音の上に「ピロピロ」と口笛のような金属質の高い倍音(第6〜第12倍音)が際立って聴こえてくる瞬間がある。この感覚を反復練習で研ぎ澄ませていく。
シンギングボウルで綺麗な倍音を奏でるコツ
ヒーリングやマインドフルネスの現場で評判を集めるシンギングボウルは、豊かな整数次・非整数次倍音の集合体だ。鳴らし方ひとつで倍音の出方が劇的に変化する。
ボウルを手のひらに平らに乗せ、指先でボウルの側面に触れて振動を止めないように注意する。付属の木製マレット(スティック)を垂直に持ち、フチの外側を均一なスピードと一定の圧力でゆっくりと円を描くように擦る。擦る速度が速すぎると甲高い摩擦ノイズ(チャタリング)が発生し、綺麗な倍音が立ち上がらない。均一な圧力を保ちながらじっくり回転させることで、低音から高音まで重層的な倍音が空間いっぱいに広がっていく。