男性スーツのボタンマナー完全版|一番下を開ける理由と正しい留め方
フロントボタンのマナーをマスターしたら、次に目を向けるべきは「袖口のボタン」と「ボタンの素材」です。既製服と高級仕立て服の決定的な違いは、このディテールに色濃く現れます。
袖ボタンの「本切羽(ほんせっぱ)」とは何か
一般的な既製スーツの袖口は、ボタンが飾りとして縫い付けられているだけの「開き見せ(飾り切羽)」が大半です。一方、本格的なオーダースーツや高級プレタポルテでは、実際に袖口のボタンホールが開き、ボタンの開閉ができるスーツ袖ボタン本切羽(surgeon's cuffs)が採用されます。
本切羽は、かつて軍医や外科医が戦場でジャケットを脱がずに袖をまくって治療を行っていた歴史に由来します。現代のビジネスシーンでは、本切羽の袖先から1つだけボタンを外しておく着こなしが「オーダーメイドを着こなしている証」として好まれることがあります。ただし、厳格なフォーマルシーンや重要な商談の場では、袖ボタンはすべて留めて端正に見せるのが大人の分別です。
スーツボタン素材水牛貝がもたらす圧倒的な質感差
量産型の安価なスーツには、石油由来のプラスチック(ポリエステル)ボタンが多用されています。一方、仕立ての良いスーツには必ず天然素材の高級ボタンが採用されます。
- 本水牛ボタン(ホーンボタン):水牛の角を削り出して作られるボタン。重厚な光沢と特有のマーブル模様があり、使い込むほどに深みが増す。ダークスーツやビジネススーツ全般に最適な最高峰の素材。
- 貝ボタン(シェルボタン):白蝶貝や黒蝶貝などの天然貝から削り出されるボタン。光の当たり方によって七色に輝く上品な透明感を持ち、春夏用のリネンスーツやライトグレーのジャケット、ドレスシャツに抜群の清涼感を与える。
- ナットボタン(コロゾボタン):南米のタグワヤシの種子を原料とする植物性ボタン。温かみのある木目調の質感と落ち着いた発色が特徴で、ウールやツイード素材と好相性。
天然ボタンは熱に強く、クリーニングを重ねてもプラスチックのように白く変色したり割れたりしにくいという実用面での大きなメリットもあります。Vゾーンや手元に天然素材のボタンが配されているだけで、スーツ全体の佇まいが劇的にクラスアップします。