宮崎駿『風立ちぬ』に隠された遺言とは?引退撤回の真相と結末の謎
本作のクライマックス、緑が広がる夢の草原で二郎が師と仰ぐカプローニ、そして妻の菜穂子と再会するラストシーンは、公開直後から多くの考察を呼んでいます。結核に侵された菜穂子は、二郎の設計作業を見届けた後、自ら富士見高原療養所へと静かに戻り、息を引き取ったことが暗に示されます。
去りゆく菜穂子が二郎に向けて放つ「あなた、生きて」という言葉。実は初期の絵コンテ段階では、菜穂子のセリフは「来て」となっていたことが明かされています。「来て」であれば、死後の世界へ二郎を誘う甘美な心中エンドを意味します。しかし、宮崎監督は制作終盤でこのセリフを「生きて」へと決定的に変更しました。
自分が手掛けた美しい飛行機は1機も戻らず、愛した妻も失った焼け野原の現実の中で、それでも人間は業を背負いながら生き抜かねばならないという強い意志。絶望的な喪失の果てに響く菜穂子の祈りは、破壊と再生を繰り返す人類に対する宮崎監督からの痛烈なエールとして解釈されています。