暗所で視界が消える・胸がざわつく理由とは?夜盲症の兆候と心理の闇

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暗闇に足を踏み入れた瞬間、健常な眼球の内部では極めて精巧な光化学反応が進行している。人間の網膜には、明るい場所で色や高解像度の形状を識別する約600万個の「錐体細胞」と、暗がりでわずかな光の粒子を捉える約1億2000万個の「杆体(かんたい)細胞」が存在する。暗所視杆体細胞仕組みの中核を担うのが、杆体細胞に含まれる光受容タンパク質「ロドプシン」だ。

強い光を浴びている間、ロドプシンは分解された状態にあるが、暗所に入るとビタミンAを消費しながら急速に再合成を始める。明所から暗所へと目が順応するプロセスを「暗順応」と呼び、錐体細胞による予備適応に約5分、杆体細胞による本格的な感度上昇には約20分から30分を要する。この生理学的な暗所適応時間を無視して急激に暗闇へ突入すれば、誰しも一時的な視覚喪失に陥るのは自然な現象だ。

問題は、この暗順応プロセスが正常に機能しないケースである。同席している他者が「目が慣れてきた」と歩行を再開できる環境下で、自分だけが何分経過しても輪郭すら捉えられない場合、暗所で見えにくい原因は網膜の病変、あるいは視覚情報を処理する脳神経の伝達障害にあると考えるのが医学的見地だ。さらに、暗闇による視覚情報の完全な遮断は扁桃体を過剰に刺激し、自律神経の急激な乱れを引き起こすトリガーにもなり得る。

橋本 菜々子

橋本 菜々子

トレンドリサーチャー

グルメと旅を愛するフリーライター。全国各地の隠れた魅力を独自の視点から紹介します。