甘糟りり子の現在と独身の真相|鎌倉の家と母・幸子から継いだ暮らし
甘糟りり子さんのプロフィールとキャリアを振り返ると、日本の消費社会とカルチャーの変遷がそのまま重なり合います。現在60代を迎えた彼女の足跡は、決して平坦な一本道ではありませんでした。
玉川大学文学部を卒業後、アパレル企業勤務やフリーライターのアシスタントを経て文筆の世界へ足を踏み入れました。1990年代、20代後半から30代にかけては、『Domani』『CLASSY.』『CREA』などのトップ女性誌で連載を担当。バブル経済の華やぎが色濃く残る東京のナイトシーンやレストラン事情を軽妙にレポートし、「都会的なトレンディ派エッセイスト」の代表格として脚光を浴びました。
しかし40代以降、彼女の視線は夜の街から人間の内面、女性の肉体、家族の力学へと深まりを見せていきます。小説の執筆に挑み、さらに母の介護を機に生まれ故郷の鎌倉へ生活の重心を完全に移したことで、その文体は研ぎ澄まされ、自然の移ろいや暮らしの手触りを伝える温もりを帯びるようになりました。時代の波に翻弄されることなく、自身の年齢や環境の変化に合わせてしなやかに脱皮を遂げてきたことこそ、彼女の稀有な才能といえます。