じゃりン子チエのヒラメちゃんが世代を超えて愛され続ける真の理由
作中で描かれる彼女の特技は、一般的な少年少女漫画のステレオタイプを鮮やかに覆します。その象徴が「相撲」と「絵画」です。
普段のかけっこでは誰よりも遅く、鈍臭いと揶揄されることの多い彼女ですが、土俵に上がると話は別です。腰の据わった天性の重心移動と強靭な足腰を誇るヒラメちゃん 相撲の実力は圧巻で、クラスの乱暴者や体格で勝る男子児童をことごとく投げ飛ばします。力任せではなく、相手の力を柔軟にいなして寄り切るその相撲道は、彼女の穏やかな内面がそのまま肉体化したような凄みを帯びています。
さらに読者の度肝を抜いたのが、ヒラメちゃん 絵の才能が爆発するエピソードです。校内の写生大会において、小手先の技巧ではなく、描く対象の「哀愁」や「生命の重み」をそのままキャンバスへ写し取った彼女の絵は、美術の専門家や周囲の大人たちを言葉を失わせるほどの衝撃を与えました。チエの日常や下町の情景を描いたその筆致には、言葉で自己主張できないヒラメの内省的な精神世界が濃密に投影されていたのです。