カンタス航空「墜落ゼロ」神話の真実と危機を救った運航の舞台裏
2008年10月7日、シンガポール発パース行きのエアバスA330-300で発生したカンタス航空72便急降下事故は、ハイテク旅客機の歴史において最も不気味なトラブルの一つとして記憶されている。西オーストラリア州上空を巡航中、機体のエア・データ慣性基準ユニット(ADIRU)が突如として誤った迎角データを送信。主飛行制御コンピューターは機体が失速の危機にあると誤認し、乗員の手を介さずに自動で猛烈な急降下コマンドを実行した。
シートベルトを締めていなかった乗客や客室乗務員は天井に激突し、機内は阿鼻叫喚の修羅場と化した。機長らは操縦桿を引き続けたが、システムはわずか数分後に再び2回目の急降下を強行する。オーストラリア運輸安全局(ATSB)による綿密な調査の結果、ハードウェアの微細なデータ異常とソフトウェアのアルゴリズム処理の盲点が重なり合った稀に見るシステム障害であることが判明した。機長の手動操縦によるリアマウス飛行場への緊急着陸がなければ、大惨事は避けられなかった。