猫の呼吸でお腹が動くのは危険?命を守る見分け方と緊急サイン
猫が胸だけでなくお腹の筋肉を過剰に使って呼吸している場合、その背景には致死率の高い内部疾患が隠れているケースが大半を占めます。臨床現場で特に遭遇頻度の高い「3大疾患」の病態機序を解説します。
1. 肥大型心筋症(HCM)と続発する肺水腫
猫の心疾患の代表格である肥大型心筋症(HCM)は、心臓の筋肉が内側に向かって分厚くなり、血液を送り出す部屋が狭くなってしまう病気です。初期〜中期はほぼ無症状で進行しますが、心臓の左心房圧が上昇して血液が鬱滞すると、毛細血管から液体が肺胞に漏れ出し、肺水腫(肺が水浸しになる状態)を引き起こします。
肺で酸素交換ができなくなるため、猫は酸欠に苦しみ、お腹を激しく波打たせて呼吸数を急増させます。「昨日まで元気に遊んでいた猫が、突然息苦しそうにお腹をペコペコさせている」というケースの多くは、この心筋症の急激な悪化によるものです。
2. 胸水貯留(心不全、猫伝染性腹膜炎・FIP、胸膜炎)
肺の外側(胸腔内)に液体が溜まる胸水も、激しい腹式呼吸の主要因です。肺の周囲に水が溜まることで肺が物理的に膨らむスペースを奪われ、猫はどれだけ力を入れても空気を吸い込めなくなります。この圧迫を代償するために、お腹の腹直筋や横隔膜を限界まで絞り出すように動かすため、お腹のへこみと胸の動きがチグハグになる独特の努力性呼吸が現れます。
3. 猫喘息・慢性気管支炎による気道閉塞(ゼーゼー音の正体)
アレルギーやハウスダストなどが引き金となる猫喘息では、気管支が炎症を起こして痙攣し、空気の通り道が極度に狭くなります。息を吐き出す際に強い抵抗がかかるため、お腹をギュッと絞るようにして息を吐き出します。このとき、「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という喘鳴音(ぜんめいおん)が聞こえたり、首を低く伸ばして激しく咳き込む発作が見られます。