人類補完計画とは?ゲンドウとゼーレの目的&旧劇シンエヴァ結末徹底考察
人類補完計画の結末は、制作された時代の空気感と、総監督・庵野秀明氏自身の精神的成熟をダイレクトに反映しています。
【旧劇場版の結末:傷つく痛みを肯定する「拒絶」】
旧劇において、全人類がL.C.L.の海に溶け合い、個人の境界が消えた究極の安息空間の中で、シンジは「ここには自分以外の誰もいない、自分を傷つける他者もいないが、それは死んでいるのと同じだ」と気付きます。シンジは「他者と傷つけ合う痛みがあっても、もう一度生きてみたい」と願い、人類補完計画を自ら中断・拒絶しました。
ラストシーン、赤い海の浜辺で目覚めたシンジは、隣に横たわるアスカの首を絞めます。これは他者の存在を物理的・暴力的に確かめる行為であり、それに対してアスカが頬に手を添え「気持ち悪い」と言い放つ描写は、「他者とは自分の思い通りにならない、異質で不快な存在である」という冷徹な現実を突きつけるものでした。
【シン・エヴァンゲリオンの結末:エヴァの呪縛を解く「新生(ネオンジェネシス)」】
対して『シン・エヴァンゲリオン劇場版』では、ゲンドウが引き起こした「アディショナルインパクト」に対し、シンジは暴力による対決ではなく「徹底的な対話」で応じます。ゲンドウの内面深くに潜む「ユイを失った絶望と孤独」を受け止め、父を補完から解放しました。
シンジが選んだ結末は、世界を過去へ巻き戻す(リバースする)ことではなく、世界を書き換えて「エヴァンゲリオンという存在そのものを消し去り、エヴァがなくても生きられる世界(Neon Genesis)」を創生することでした。アスカ、レイ、カヲル、そして両親の呪縛を一人ずつ解き放ち、最後は自らもエヴァの呪縛から脱却。マリと共に現実の街へと走り出すラストは、30年に及ぶ思春期の葛藤に完全な終止符を打つ、清々しい旅立ちの宣言でした。