サカナクション「忘れられないの」が心震わせる理由と80年代Mvの真相
楽曲の魅力を倍増させたのが、映像ディレクター・田中裕介がメガホンを取ったミュージックビデオです。公開されるや否や、映像業界関係者やリスナーの間で「狂気的なまでのこだわり」と絶賛を集めました。
MVの舞台は、80年代後半の歌番組やリゾート地を模したセット。山口一郎が肩パッドの入った真っ白なダブルのスーツに身を包み、プロデューサー巻きのカーディガンを羽織ったスタッフや、ワンレングスヘアの女性ダンサーたちを従えて登場します。このビジュアル表現には、明確な元ネタと膨大なカルチャーへのリスペクトが散りばめられています。
特にカルロス・トシキ&オメガトライブの「君は1000%」や「アクアマリンのままでいて」、あるいは鈴木雅之や稲垣潤一の出演番組を彷彿とさせるカメラワークは圧巻です。画面比率は当時のテレビ規格である「4:3」を採用。特注のソフトフォーカスレンズを用い、過剰な送風機による風の演出、左右へ滑らかに移動するクレーンカメラ、曲の終わりに自然とフェードアウトしていく演出まで、当時の「夜のヒットスタジオ」や「ザ・ベストテン」の空気感を1ミリの狂いもなくトレースしています。
単なるパロディで終わらせず、当時のカルチャーが持っていた華やかさと、どこか刹那的な虚無感をスタイリッシュなアートへと昇華させた手腕は、映像史に残る金字塔と言えます。