世界一の大富豪となった学者・森泰吉郎が東京を変えた経営哲学
数々の人物評伝・経済ノンフィクションで描かれる森泰吉郎像は、不動産ディベロッパーというより、むしろ禁欲的な哲学者に近い。黒塗りの高級車を乗り回すこともなく、移動には地下鉄やハイヤーを使い、派手な交際を嫌った。社員に対しても、利益の追求以上に「社会に役立つ建造物を残しているか」を厳格に問い続けたという。
経済学者としての計量分析に基づき、無理なレバレッジを排した財務規律を徹底したことも特筆すべき点だ。借入金に依存して土地を買い漁った多くの同業他社がバブル崩壊とともに淘汰されていく中、森ビルが屋台骨を揺るがすことなく生き残ったのは、創始者の透徹したリスク管理があったからにほかならない。