桑田佳祐『明日晴れるかな』の真実|名曲が語る後悔と希望の深層
ネット上の言説において、本作は時に「ドラマのタイアップによって流行した青春の失恋ソング」と平易に片付けられがちですが、これは音楽史的・作品論的な観点から見れば明確な誤解です。
第一の盲点は、この楽曲が「失恋した相手への未練」だけを歌ったものではない点です。歌詞を精緻に追体験すると、語られているのは特定の恋人に対する感情にとどまらず、「かつて純粋に夢を追いかけていた自分自身との対話」であることが分かります。大人になり、妥協や打算を覚え、いつの間にか情熱を失ってしまった自己に対する哀歌であり、同時にそんな自分を抱きしめて許すための自己救済のプロセスが描かれています。
第二の誤解は、「ノスタルジーに浸るための後ろ向きな曲」という捉え方です。確かにメロディは哀愁を帯びていますが、楽曲の骨格をなすリズム隊は力強いミディアム・エイトビートを刻んでおり、コーラス隊のハーモニーは未来への前進を力強く鼓舞しています。悲哀に浸りきることなく、泥臭く現実を一歩ずつ踏み出すためのエネルギーを注入する構造になっている点を見落としてはなりません。