なぜ人々は並ぶのか?老舗大衆食堂・中村屋の極上和食定食に迫る
厨房で鋭い眼光を放ちながら包丁を握るのは、この道数十年の料理長・店主だ。毎朝夜明け前に市場へ足を運び、自らの目と舌で納得した魚介や野菜だけを仕入れる。冷凍の加工品や出来合いの調味料に頼ることは一切ない。「大衆食堂だからこそ、嘘のない本物の味を安く出したい」。仕込みの合間に見せる柔和な笑顔の奥に、妥協を許さない職人の矜持が宿る。
この店が提供する料理の根底にあるのは、本格的な日本料理の修業で培われた確かな技術だ。煮物ひとつをとっても、食材ごとに火入れの時間を秒単位で調整し、煮崩れを防ぎながら芯まで味を染み込ませる。出汁は毎朝、気温や湿度に合わせて昆布の浸漬時間を変えるほどの徹底ぶり。派手な演出はない。しかし、一口含めば丁寧な仕事ぶりが舌の上にじんわりと広がる。