なぜロッカーはギターを壊すのか?「もったいない」の裏にある真相
1990年代に入ると、グランジ・ムーヴメントの旗手となったニルヴァーナ(Nirvana)のカート・コバーンがギター破壊に新たな意味を与えました。
カート・コバーンの破壊行為は、商業主義にまみれた音楽業界への強烈な嫌悪感と、自らの内面に渦巻く鬱屈、そして貧困家庭に育ったコンプレックスが複雑に絡み合った叫びでした。彼は左利き用の高価なギターが手に入らないため、右利き用の安価なフェンダー製ギターを改造して使っては、ステージの最後にアンプやドラムセットへ向かって投げつけました。「思い通りにならない音への苛立ち」と「すべてを台無しにしたい自己破壊願望」が混ざり合ったその姿は、当時の閉塞感を抱える若者たちの熱狂的な共感を呼んだのです。
日本国内において、この楽器破壊のインパクトを大衆へ決定づけた存在がX JAPANのYOSHIKIです。YOSHIKIといえば激しいドラム破壊が代名詞ですが、ライブの感情が高まりきった局面ではギターをステージに叩きつけるなど、全身全霊の破壊パフォーマンスを披露してきました。
YOSHIKIの場合、それは単なる反逆というよりも「肉体の限界を超えてすべてを出し尽くす感情の昇華」であり、美意識と狂気が同居するヴィジュアル系独自の劇場型パフォーマンスとして確立されました。予定調和を嫌い、その日の感情を限界まで注ぎ込む姿勢が、観客を異次元の熱狂へと引きずり込みました。