『手のひらを太陽に』絶望の淵から生まれた歌詞の深層と誕生秘話
昭和30年代後半、漫画家としての仕事に恵まれず、放送作家や舞台美術など雑多な仕事で食いつないでいた時期に、作詞のインスピレーションは唐突に訪れた。暖房もない極寒の作業部屋。原稿用紙に向かいながらかじかむ手を温めようと、手元にあった懐中電灯にかざした瞬間、皮膚の下を脈打つ赤い血が鮮やかに浮かび上がったという。
「自分はまだ死んでいない。生きているんだ」。戦争体験による極限の飢餓と、何者にもなれない焦燥感に苛まれていた心に、生きている実感そのものが雷鳴のように突き刺さった。ミミズやオケラ、アメンボといった泥臭い生き物たちが歌詞に並ぶのも、美辞麗句ではない命の生々しさを肯定するためだ。絶望の底で確認した生命の温もりこそが、名曲誕生の知られざる原点である。