日本の尊厳死と法制化の現在地|安楽死との決定的な違いと判断基準
終末期医療の議論で最も誤解されやすいのが、「尊厳死」と「安楽死」の概念の差異です。日常会話やネット上の議論では同義として扱われがちですが、医学・法学の観点では明確な境界線が引かれています。
日本において一般的に「尊厳死」と呼ばれる行為は、回復の見込みがない終末期に、人工呼吸器の装着や昇圧剤の投与、胃ろうなどの過剰な延命治療を差し控え、あるいは中止して自然な死を迎えること(消極的安楽死・自然死)を指します。これに対して「安楽死(積極的安楽死)」は、耐え難い苦痛を抱える患者に対して、医師が致死薬の投与などを行って直接的に死期を早める行為を意味します。
「スイス安楽死と日本の比較」において着目すべき点は、スイスでは非営利団体を通じて外国人にも自殺幇助の門戸が開かれている一方、日本においては第三者が死の直接的手段を提供することが刑法上禁じられているという構造的断絶です。日本国内の議論においては、まず「延命治療を止めること(尊厳死)」と「命を意図的に終わらせること(安楽死)」を切り離して捉える必要があります。