高卒と大卒の生涯年収格差は?手取り・退職金で逆転する噂の真相
インターネット上で頻繁に囁かれる「高卒の方が生涯手取りで大卒に勝てる」という噂。その根拠として挙げられるのが、「大卒は学費(国公立で約250万円、私立文系で約400万円、私立理系で約550万円以上)がかかる」「日本の累進課税により年収が高いほど税金と社会保険料の負担率が上がる」「4年早く働き始めて貯蓄と運用に回せる」という主張です。
果たして、手取り額の比較を行うと逆転は起きるのでしょうか。実効税率や社会保険料を差し引いて手取りを試算すると、次の内訳が浮き彫りになります。
・高卒生涯手取り(額面2億1,500万円の場合):約1億7,000万円
・大卒生涯手取り(額面2億7,500万円の場合):約2億1,000万円
年収が上がると手取り率は下がるものの、その差は約4,000万円。大学の学費や在学中の生活費として500万〜800万円を差し引いたとしても、手元に残る資金にはなお約3,000万円以上の開きがあります。額面賃金だけを理由にした手取り逆転は、平均値ベースでは成立しません。
さらに追い打ちをかけるのが、退職金の格差です。中央労働委員会などの実態調査によれば、定年退職者の平均退職一時金・企業年金の総額には大きな隔たりがあります。
・高卒(定年退職):約1,000万円〜1,300万円
・大卒(定年退職):約1,800万円〜2,200万円
退職金だけでおよそ800万〜1,000万円前後の差がつき、生涯給与の開きに合算されます。
では、生涯賃金逆転の可能性は完全にゼロなのかといえば、そうではありません。例外的に逆転が起きるのは以下のような特定ケースに限られます。
1. 超大手インフラ・重工業メーカーの高卒現業職:高卒枠で電力会社、鉄道会社、大手製鉄・自動車メーカーの工場勤務に入社し、夜勤手当や残業代を堅実に積み上げ、中小企業勤務の大卒を大幅に上回るケース。
2. 独立・起業・歩合制営業での成功:不動産売買や保険のトップセールス、建設業などでの独立親方となり、学歴不問で年収1,000万円以上を長期維持するケース。
3. 20代前半からの長期インデックス投資:高卒で18歳から余剰資金を年利5〜7%で運用し、大卒が社会に出る前に大きな元本を作って資産運用益で差を埋めるケース。
「普通に会社員として勤め上げた場合」に手取りや退職金で自然と逆転するという言説は、統計的には根拠に乏しい希望的観測と言わざるを得ません。