名工の極意「利き土」の真髄!土壁や陶芸で今再び脚光を浴びる理由
「利き土」の技術が最も厳密に発揮されるのが、日本の伝統建築を形作る左官工事の現場です。日本の気候風土に適した土壁は、幾重もの層を塗り重ねることで完成しますが、層ごとに求められる土の配合と役割は全く異なります。
下地となる荒壁土(あらかべつち)では、粘りの強い田土などに藁スサを混ぜ、数ヶ月間寝かせて発酵させた土が用いられます。この発酵によって生じる粘り気と繊維の絡み合いを「利き土」で見極め、柱や竹小舞(たけこまい)に強固に食いつく強度を確保します。
中間層の中塗土(なかのりつち)では、平滑さと乾燥時の狂いを防ぐため、砂の粒度調整が生命線となります。砂が多すぎればボロボロと崩れ、粘土が多すぎれば激しい乾燥クラック(ひび割れ)が発生するため、職人は土をこねる際の手応えから配合比率をミリ単位で微調整します。
そして最表面を飾る仕上げ土(京壁や聚楽土など)においては、土特有の風合いや色合い、きめ細やかさを極限まで引き出すための選別が行われます。何十年、何百年と崩れない土壁の耐久性は、施工前の確かな「利き土」にかかっていると言っても過言ではありません。