中世ヨーロッパを破壊した黒死病の真相と現代医学が突きつける教訓

中世ヨーロッパを破壊した黒死病の真相と現代医学が突きつける教訓の最新情報を解説します。専門的な知識が満載です。

1347年、クリミア半島からシチリア島に到着した商船の船員たちが持ち込んだ異変が、すべての始まりだった。急速に広がった病は、発熱や悪寒に続き、鼠径部や脇の下のリンパ節が卵ほどの大きさに腫れ上がる症状を引き起こした。いわゆる腺ペストと呼ばれる病型である。治療法を持たない中世の人々は、原因不明の死の恐怖にただ怯えるしかなかった。

この地獄絵図を克明に記録したのが、フィレンツェの作家ジョヴァンニ・ボッカッチョだ。彼の代表作である『デカメロン』の序文には、死体を運ぶ手が追いつかず、町中に死臭が立ち込めた凄惨な情景が記されている。一方、アヴィニョン教皇庁の外科医であったギ・ド・ショーリアックも自身が感染しながら奇跡的に回復し、病の進行と貴重な臨床的観察を後世に残した。都市機能は麻痺し、人々は絶望の中に突き落とされた。

橋本 菜々子

橋本 菜々子

トレンドリサーチャー

グルメと旅を愛するフリーライター。全国各地の隠れた魅力を独自の視点から紹介します。