お尻のえくぼが痛む謎!上後腸骨棘の異変と仙腸関節障害の真相
医学用語では「PSIS(Posterior Superior Iliac Spine)」と略称される上後腸骨棘ですが、具体的に上後腸骨棘はどこにあるのかを正確に把握している人は多くありません。解剖学データベース『e-Anatomy』などの定見によると、上後腸骨棘は骨盤の大きな翼を形成する「腸骨稜」の後端に位置する明瞭な骨性隆起であり、腸骨稜の上縁と後縁が合流するポイントに存在します。
体表から見ると、いわゆる「お尻のえくぼ」や「ヴィーナスのえくぼ」と呼ばれる左右のくぼみの直下に位置しており、骨盤の傾きや位置関係を把握するための極めて重要な臨床ランドマークです。臨床医学において脊髄麻酔や腰椎穿刺の目安とされるヤコビー線(両側腸骨稜の最高点を結ぶ線)は第4腰椎棘突起付近を通りますが、上後腸骨棘はそのわずか下方、第2仙椎(S2)の高さに位置しています。また、血液疾患の診断などで行われる骨髄穿刺による腸骨採取においても、血管や神経の走行が安全な領域として、この上後腸骨棘周辺の腸骨後部が最も信頼性の高い採取部位として選ばれ続けています。
混同されやすい部位として上前腸骨棘(ASIS)との違いが挙げられます。上前腸骨棘は骨盤の前方、腰骨の出っ張りとして手で容易に触れられる部位であり、大腿筋膜張筋や縫工筋などの下肢前面の筋肉が付着しています。一方で上後腸骨棘は背面に位置し、脊柱を支える腰部多裂筋の起始部や強力な後仙腸靭帯が付着する要所です。前方のASISと後方のPSISを結ぶ傾斜角を測定することで、骨盤が前傾しているか後傾しているかという「骨盤アライメント評価」の基準指標となります。
理学療法士や徒手療法の専門家が実践する上後腸骨棘の触知方法としては、ウエストのくびれ部分に親指以外の指を置き、腸骨稜を上から挟み込むようにして後方へと指を滑らせていく手法が一般的です。後方の最も隆起した骨の頂点に親指が触れた場所が上後腸骨棘です。触診リテラシーを高める臨床現場の知見でも強調される通り、この頂点を正確に捉えられるかどうかが、仙腸関節周辺の微小な炎症を特定するための生命線となります。