世界的演出家・蜷川幸雄の劇的美学とハムレット秘話!受け継ぐ情熱
蜷川の代名詞とも言えるのが、ウィリアム・シェイクスピアが手掛けた世界最高峰の悲劇の再構築だ。なかでも『ハムレット』は、彼が生涯で何度も挑み続けた特別な作品である。1995年の公演では、舞台上に巨大なひな壇を設置し、無数の千羽鶴や灰色の背景を配置することで、死の匂いと日本的な哀愁が同居する異次元の空間を作り出した。
「生きるべきか、死ぬべきか、それが問題だ」。あまりにも有名で陳腐化しかねない独白を、蜷川は役者に「生きた人間の切実な葛藤」として吐き出させた。客席から漂う線香の香り、登場人物たちの叫び、そして幕切れの疾走感。観客は450年前のエリザベス朝演劇を見ているのではなく、自分自身の生命の揺らぎを目撃しているかのような錯覚に陥る。この『ハムレット』の劇的体験こそが、世界的演出家の真骨頂であった。