なぜ今また樹木希林の本が読まれるのか?不朽の言葉と独自の哲学
樹木希林を語る上で、夫・内田裕也との関係を抜きにすることはできない。半世紀近くにわたり別居を続け、警察沙汰や数々のトラブルに見舞われながらも、最期まで離婚という選択肢を選ばなかった二人の関係は、世間の常識をことごとく覆した。
「夫は私にとって、自分自身の傲慢さを映し出す鏡のような存在」。そう語った希林の結婚観は、ロマンチックな愛の神話とは無縁の、一種の修行僧のような厳しさを帯びていた。愛憎を昇華させ、相手をありのままに受け止める覚悟。そこには、他者への期待やエゴという名の執着を手放した人間だけが到達できる境地がある。
人間関係の希薄化や摩擦への過剰な恐れが蔓延するいま、彼女の破格なパートナーシップ論は、人間関係の複雑さを丸ごと愛するための教科書として読まれている。