名優・綿引勝彦の知られざる生涯|代表作と闘病の真実、妻との絆を追う
強面(こわもて)の風貌から繰り出される鋭い眼光と、ふとした瞬間に見せる包容力あふれる笑顔。綿引勝彦さんという俳優の魅力は、その極端な振れ幅を完璧に成立させる圧倒的なリアリズムと人間味にありました。
TBS系の大ヒット昼ドラマ『天までとどけ』で演じた丸山雄平役では、岡江久美子さん演じる妻と共に13人の子どもたちを温かく見守る父親像を確立。昼ドラとしては異例の最高視聴率19.0%を記録し、日本中の食卓に「理想の父親」として親しまれました。その一方で、映画『極道の妻たち』やドラマ『ナニワ金融道』では冷徹かつ迫力に満ちた人物を怪演し、作品の緊張感を一段引き上げるバイプレイヤーとして唯一無二の地位を築いたのです。
舞台関係者の証言によると、綿引さんは「芝居とは人間の業(ごう)をさらけ出すこと」を信条とし、役柄の大小を問わず台本の行間を徹底的に読み解く職人肌の役者でした。画面越しに伝わる迫真の演技は、天性の資質だけでなく、若い頃から培われた徹底したリアリズムへのこだわりから生まれていました。