時代を紡ぐ言葉の奇術師——2026年に読み直す三浦しをん文学の最高峰と不滅の魅力
大学の植物学研究室を舞台にした『爱なき世界』は、本屋大賞ノミネートや各種文学賞で高い評価を得た注目の意欲作だ。洋食屋の見習い料理人である主人公が恋をした相手は、本気でシロイヌナズナの研究に没頭する大学院生だった。
人間同士の恋愛感情すら立ち入れないほど、植物の謎を解き明かすことに魅せられた研究者たちの偏愛ぶり。利益や効率を求める社会からは一線を引き、ただ純粋に知的好奇心を追求する姿が、どこか清々しく描かれる。読後は普段なにげなく目にしている街路樹や雑草を見る目ががらりと変わるような、新鮮な視点を与えてくれる。