ゴッホも熱狂した広重の雨!大はしあたけの夕立が放つ究極の美
広重が最晩年に手掛けた連作『名所江戸百景』は、当時の江戸町民を狂喜させただけでなく、風景を描く「名所絵」の概念そのものを根本から覆した。従来の浮世絵版画に見られた鳥瞰的な視点を大胆に捨て去り、極端な近景と遠景を対比させる映画的なフレーミングを採用したのである。
大橋(新大橋)を斜めにズバッと横切らせる大胆不敵な対角線構図。画面手前には傘をすぼめて前屈みになり、足早に橋を渡る町人たちのリアルな身振りが描かれ、対岸の「あたけ(幕府の軍船・安宅丸がかつて置かれていた深川一帯)」は深い雨煙の中にぼんやりと霞んでいる。この圧倒的な遠近感の跳躍が、見る者を瞬時に「豪雨に呑み込まれた江戸の現場」へと引きずり込むのだ。