視力を失いかけた洋画家・粉川江里子──光と影のキャンバス、10年の空白を超えた真実の叫び
しかし、光が強ければ影もまた濃い。疾走の渦中にあった粉川を、原因不明の重篤な病が襲う。自己免疫疾患の発症である。体の免疫システムが自身の正常な組織を攻撃し、激しい倦怠感と全身の痛みが彼女の身体を蝕んでいった。
さらに画家にとって致命的だったのが、視覚の異常──「弱視(amblyopia)」の進行だった。色を見分け、形を捉え、光と影の微細な濃淡を識別する眼が、徐々に機能を奪われていく。筆を握る体力すら失われ、キャンバスに向かうことすらできない日々。絵画制作からの離脱は、彼女にとって生きる意味そのものを問われる過酷な試練となった。