映画『典子は、今』の主人公・白井のり子の現在と語り継がれる軌跡
本作のメガホンを取った松山善三監督の手腕も、映画史において語り継ぐべき重要な要素である。『名もなく貧しく美しく』など社会派の名作を手がけてきた巨匠は、白井のり子の実体験を基に、フィクションとドキュメンタリーの手法を融合させた独自の手法で本作を構築した。
劇中で描かれた家族の葛藤や思春期の切ない想いは、松山監督の徹底したリアリズムへのこだわりによって、普遍的な人間賛歌へと昇華された。第5回日本アカデミー賞をはじめとする数々の映画賞で高い評価を獲得したことは、商業主義に傾倒しがちだった当時の映画界において、真のヒューマニズムを問いかけた記念碑的な出来事として記憶されている。