西加奈子『きりこについて』ルッキズムを超えた愛の結末と真相
後に大河小説『サラバ!』で直木三十五賞を受賞し、日本を代表する表現者となった西加奈子。その文学的源流を辿る上で、『きりこについて』は極めて重要な結節点に位置している。人間の醜さや弱さを決して見捨てず、関西弁の軽妙なリズムと剥き出しのパッションで包み込む作風は、すでに本作で鮮やかに開花していた。
現代小説の枠組みにおいて、彼女が描き続けているのは一貫して「個の尊厳」である。『サラバ!』で主人公が自らの信じるものを掴み取っていくプロセスは、きりこが自身の姿を受け入れ、再生していく道筋と見事な呼応を見せる。著者のキャリア初期に放たれたこの鋭敏な一撃は、その後の傑作群を予告する揺るぎない礎となった。